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グールドモニターの飼育について

精悍な顔と美しい模様,逞しい体躯に二本足で直立する特異な行動が魅力のグールドモニター。比較的幅広い環境に適応した種である彼らは丈夫で飼育自体は難しくはありません。しかし彼らの心身の健康とQOLを維持した飼育を行うのはそれなりに大変です。
​あくまで私の経験と飼育個体の個性に基づいたものではありますが,グールドモニターの飼育方法について記していきます。

※一般的な飼育管理方法です。

​性格や特性,症状などは個体差があります。

普段から生体を観察し, 何らかの異常が疑われた場合は購入したショップや門知識のある獣医師に相談してください。

グールドモニター(雌雄)
飼養環境
●飼養施設(ケージ)

生体のサイズ及び成長ステージに応じた充分な広さを備えたものを用意しましょう。
生後2年程度までは市販の爬虫類専用ケージ(90~120cmサイズ)でも飼養可能ですが,亜成体~成体の場合は4帖程度のスペースで飼養する,もしくはケージの外(室内)に出して散歩させる等で生体の活動欲求を満たす必要があります。また清掃等が容易で逸走されない構造のもの,突起物等により傷害等を受けるおそれがないケージ及び用品を選ぶことも重要です。

●環境
温度:

成体の場合は22~35℃程度の範囲で温度勾配を設け,生体が自身で快適な場所を選択できるようにしましょう。幼体の場合は26~32℃の範囲に保ち,成体よりやや暖かい環境が必要です。
自身で体温を調節できない外温性動物のため,温度が低下すると活動性が低下します。特に食後に低温に晒された場合は消化能力が低下し致命的な障害を起こす可能性があるため要注意です。同様に高温に晒された場合は短時間で熱中症を起こし死亡することもあるため,高温にも充分な対策(サーモスタット及びエアコン)が必要です。

温度:

基本的には人間が少し蒸し暑いと感じる環境(相対湿度70~80%前後)を好みます。

過剰な乾燥は脱皮不全や呼吸器疾患の原因になりますが,逆に過湿状態が続くと皮膚疾患やカビの発生の可能性もあるため,生体や飼養環境をよく観察し適宜調整を行いましょう。

照明:

健全な睡眠と生体リズムの維持のため,自然光やタイマーによる照明管理が必要です。

紫外線:

カルシウム代謝のために紫外線を必要としますが,砂漠棲の爬虫類のように強烈な紫外線を要求する種ではありませんので市販の爬虫類用紫外線灯を使用すれば問題ありません。また日光浴させる場合は熱中症,逸走等に充分注意しましょう。特に夏場の直射日光は短時間で熱死する危険がありますし,活性が上がった状態で暴れると容易に逸走事故を誘発しますので絶対に目を離さないようにしましょう。

床材:

ペットシーツ,人工芝,木製チップ,ヤシガラ等が一般的に使用されます。ただし木製チップやヤシガラは粉塵が発生し眼疾患や呼吸器疾患を発症したり,誤飲のリスクもあるため,床材の選定は個体の状態や管理のしやすさを充分考慮して行いましょう。
​私個人的な考えでは排泄物の吸収用にペットシーツを起き,その上にパネルタイプ人工芝を設置するのが最もコスト・メンテナンス性・衛生面で優れていると思っています。また人工芝の隙間に爪が入るため,指の骨の変形予防にもなるという利点があります。

同居:

本種は大型になる肉食性の種のため,基本的に他種との同居は出来ません。また同種間においても致命的な闘争を行うことがあるため単独飼養が基本となります。
繁殖を行う場合はこの限りではありませんが,発情期以外の雌個体は雄個体の存在がストレスとなる場合があるため,充分観察を行い必要であれば隔離する必要があります。幼体期から同居している個体同士の場合は問題なく同居が出来る場合も多いですが,ケージ外等環境が変わった状態で接触させると外敵と判断して攻撃的になる場合があります。特に雌個体の場合は他の雌個体に対して排他的になる傾向があり,雄同士の儀礼的な闘争ではなくすぐに咬み合いに発展することがあります。

食餌と栄養管理・給水管理
●食性

本種は純肉食性の動物です。昆虫及びマウスや雛ウズラ,ヒヨコ等の小動物(冷凍品含),肉食性トカゲ用の人工飼料,市販の食用肉,卵等を栄養バランスを考慮した上でカルシウムやビタミン等のサプリメントも併用する必要があります。
運動量が低下しがちな飼養下においては,昆虫や市販の食用肉(脂肪分の少ないもの)を主に与え,栄養価の高いマウス等は補助的に与えた方が良いでしょう。
給餌頻度について,幼体から亜成体にかけては2~3日に1度主食を与え,食欲や個体の状態を考慮して少量ずつ追加給餌を行いましょう。成長期を超えた成体の場合は主食は1週間に1度程度に抑えて適宜少量のおやつを与えるのが栄養的にも馴化の観点からも良いと思われます。

●給餌についての注意点
活き餌:

通常の飼養においては冷凍品や市販の食用肉等で問題ありません。逆に活き餌を与えた場合,攻撃性を誘発するリスクが高いこと,更に餌動物に無用な苦痛を与えることになるため推奨はしておりません。
ただし拒食等が発生し止むを得ず活き餌を給餌する場合は,必ず飼養者の監視下で与えるようにし,餌動物の逸走や飼養個体への危害が無いように充分注意が必要です。

※弊竜舎産の個体については活き餌を与えずに飼養しています。

怪我防止:

本種は餌を丸呑みするように摂食するため,餌となる昆虫の脚,雛ウズラやヒヨコの嘴,エビの殻等で口腔及び消化管を損傷する可能性があります(特にエビの尻尾は大変鋭く危険)。確率の低いものではありますが小型トカゲにおいて死亡例もある事故なので,餌に含まれる危険な部位は除去して与えるようにしましょう。

消化不良:

本種は外温性動物のため,消化吸収のためには身体を一定以上の温度に暖める必要があります。消化管内に食物が残っている状態で低温に晒された場合,消化能力が著しく低下し体内で食物が腐敗する等の致命的な消化不良を起こす危険性があります。食後は生体が冷えすぎないように,特に冬季は温度管理にも注意が必要です。

絶食:

成体の場合はかなりの絶食には耐えられますが,長期間の絶食は肝障害を誘発する危険性があります。肥満防止等で給餌量を減らす場合,給餌頻度を極端に減らすことはリスクが高いため,少量の餌を小分けにして与える方が安全です。

●給水

本種は水中での活動も行う水を好む動物です。シェルターとしての側面もあるため,生体の全身が浸かるサイズの水入れを用意しましょう。また水中で排泄する個体も多く,汚れた水を嫌って脱水を起こす可能性もあるため常に清潔な水を飲めるようにしましょう。

運動及び休養
●運動

野生下における本種は獲物を求めて広範囲を徘徊する非常に運動量の高い動物のため,広いケージを用意するかケージ外に出して散歩させる等で活動欲求を満たす必要があります。しかし実際に飼養する上では,生体が無理なく過ごせる程度のケージを用意し,飼養者の監視の下で室内を散歩させる等で運動させるのが現実的でしょう。
※運動のため屋外に連れ出す行為は逸走のリスクを著しく高め,他人への危害・迷惑行為となる可能性が非常に高いため推奨ません。
※窓サッシや引き戸は自力で開けられる程度に器用な動物です。また窓サッシで一般的なクレセント錠も開けてしまうことがあるため,室内で運動させる場合においても逸走には充分注意しましょう

●休養

ケージ内には生体が安心してくつろげるシェルターが必要不可欠です。身体を完全に隠すことができ,かつ広すぎない程度のシェルターが理想的です。成長ステージに合わせて生体サイズに合ったシェルターを用意しましょう。
※シェルター内は生体にとって絶対的に安全な聖域となる場所です。飼養個体のストレスとなる可能性が非常に高いため,飼養個体が充分に飼養環境に馴れるまでは清掃や健康確認等の必要な管理を除き,シェルター内にいる生体に触れるべきではありません。

日常管理
●馴化

犬猫等の家畜動物と異なり一般的に「しつけ」とされるものは不可能と考えておいた方が良いでしょう。また所謂トイレトレーニングのようなものも基本的にできません(ヒトが教えるのではなく自分がトイレと定めた場所に排泄する個体は時々いるようです)。

ただし日常の管理や病気・怪我の際の診療行為のためにある程度の馴化は必要不可欠です。大型になる肉食動物であるため,ヒトに慣れていない個体は危険であり生体にとってもヒトの存在がストレスとなる状態は不適切です。生体に負担をかけない程度にヒトの存在や体に触れられることを慣らしておきましょう。近年は動物園でも一般的になりつつあるハズバンダリートレーニングは本種の飼育においても効果的です。

●日常的なケア
​清掃:

よく水を飲む動物のため,給餌の頻度に限らず基本的に毎日排泄することが多いです。特に体の小さい若齢個体や,抱卵中で消化管を圧迫されている雌個体は頻回の排泄をする傾向があります。尿量も多いため,衛生状態を保つために毎日の清掃,場合により消毒が必要です。
床材選択やケージインテリアについても生体の居住性と共にメンテナンス性も考慮した方が良いでしょう。

​脱皮:

脱皮頻度は成長ステージや健康状態により頻度は変わりますが,ヘビ類やヤモリ類のように全身が一度に剥けるのではなく,断続的に表皮の断片が剥がれ落ちる形で脱皮が進行します。この際無理に浮いた表皮を剥がそうとすると,皮膚に傷をつけてしまう場合があるので注意しましょう。
※尾の下側は鱗が肥厚し,少し黒ずんでくる傾向がありますがこれは脱皮不全ではなく正常なものです。地面に接触して擦れる部分を補強している側面もあるため,角質化した鱗を剥がすと出血や感染症のリスクがあります。

爪切り:

本種は本来広範囲を歩き回り,穴掘りも行う動物なので爪が非常に強力です。飼育下環境においては伸びすぎる傾向があるため,定期的に爪を切るか削ることが必要になります。身体が小さく爪も細い若齢個体の場合はヒト用の爪切りが使用可能ですが,成長した個体は爪が太く硬くなるため犬用の爪切りを使用するのが良いでしょう。

また爪が伸びると中の血管も伸長して爪切りの際に出血しやすくなるため,動物の爪用に市販されている止血パウダーを常備しておくと便利です。
※爪が伸びすぎると指の骨の変形や,物に引っかけて爪が折れる等事故の原因となります。

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